2.標準報酬月額の決定と改定


 トップ>社会保険>標準報酬月額の決定と改定



 毎月の給与から控除する社会保険料や厚生年金の年金額などを計算する際の基となる、対象となる報酬を切りのいい金額で区切った額を、標準報酬月額といいます。また、標準報酬月額の決定・改定の際に届け出る金額を報酬月額といいます。
 標準報酬月額の決定・改定の手続きには、次の5つの種類があります。


①資格取得時決定

(1)提出書類 被保険者資格取得届

(2)提出事由
 次の場合に届出が必要となります。
 ・適用事業所や任意適用事業所が新規に従業員を採用したとき
 ・適用事業所以外の事業所が、適用事業所に該当することになったとき
   例 個人事業主で従業員が5人以上になった
     業種変更により、適用事業になった
 ・任意適用の事業所が任意適用の申請をして認可があったとき
 ・適用除外となっていた人が、その条件に該当しなくなったとき
   例 2か月以内の期間を定めて使用していた従業員が、所定の期間を超えたとき
(3)提出期限
 事由発生のときから5日以内(採用なら入社日から5日以内)

(4)提出先
 事業所の所在地を管轄する年金事務所(日本年金機構の事務センター)
(5)提出方法
 電子申請、郵送、窓口持参
 ※届出用紙によるほか、電子媒体(CD又はDVD)による提出が可能です。
(6)報酬月額の算定
 事業所が従業員を採用した場合、当該従業員には報酬を支払った実績がないため、事業主は、厚生労働大臣が定める次の算定方法に従って、就業規則や労働契約等の内容に基づき、被保険者の報酬月額を算定することになります。なお、報酬月額の算定の基礎となる賃金についてはこちらを確認してください⇒「標準報酬月額及び標準報酬賞与の算定に含まれる報酬」 具体的な金額等は、採用時に従業員へ提示する給与条件(基本給や各手当の額及び予定される所定時間外労働時間など)の内容を反映させて算定します。

a.月、週その他一定期間によって報酬が定められる場合
 被保険者の資格を取得した日現在の報酬額をその期間の総日数で除して得た額の30倍に相当する額

b.日、時間、出来高又は請負によって報酬が定められる場合
 被保険者の資格を取得した月の前1か月間に当該事業所で、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額

c.上記a.又はb.の方法では報酬の算定が困難である場合
 被保険者の資格を取得した月の前1か月間に、その地方で、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額

d.上記a.からc.の複数に該当する報酬を受ける場合
 各々の報酬について上記a.からc.によって算定した額の合算額

(報酬月額の計算例)
 ・給与条件
 月給200,000円 役職手当15,000円 通勤手当8,000円 住宅手当25,000円
 年間所定休日120日 勤務時間1日8時間・週40時間 月の所定外労働時間20h程度

 残業手当も報酬月額の算定に加えるためまず残業手当を計算する。
  (割増賃金の計算の詳細についてはこちら「残業手当の計算」)

  月平均労働時間=(365-120)×8/12=163.33(時間)
  割増賃金の計算の基礎は月給と役職手当で所定外労働はすべて割増賃金とみなし、

  残業手当=(200,000+15,000)/163.33×1.25×20=32,908.8円≒32,909円

 報酬月額には住宅手当も通勤手当も含まれるので、

  報酬月額=200,000+15,000+8,000+25,000+32,909=280,909円

(7)被保険者資格取得届の書式
 正式な名称は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 厚生年金保険70歳以上被用者該当届」といい、厚生年金70歳以上被用者該当届を兼ねています。
 書式のダウンロード:日本年金機構HPからダウンロード こちら
 ※Excelファイル拡張子はxlsxなので古いExcelソフトでは開けません。こちらにxls形式(拡張子.xls)のファイルを掲載しました。日本年金機構の新書式の拡張子「.xls」エクセル版


(8)被保険者資格取得届の記載方法

 下の画像をもしくは日本年金機構のHPにある記載例(こちら)を見れば、簡単にわかりますが、次の点に注意です。

・雇用保険と異なり、個人番号(マインバー)の記載は必須ではない。代わりに「⑥個人番号(年金基礎番号)」の欄に年金基礎番号を記載してもよい。
・個人番号を記入した場合は、住所の記載を省略してもよい。年金基礎番号を記入した場合は、被保険者の住所を記載する必要がある。
・(6)で算定した報酬月額は、「⑨報酬月額」の欄に記載する。現金(振込みも)で支給される報酬は「㋐(通貨)」の欄に記入し、定期券などの現物支給が他にある場合は「㋑(現物)」の欄に記入する。また、合計額を「㋒(合計 ㋐+㋑)」の欄に記載する。

(9 )添付書類
 原則として必要ありませんが、以下のa.~c.に当てはまる場合は、それぞれの場合に応じて添付書類が必要となります。

a.「資格取得年月日」に記載された日付が、届書の受付年月日から60日以上遡る場合(組合健保、協会けんぽの被保険者共通)

 被保険者が法人の役員以外の場合
  賃金台帳の写し及び出勤簿の写し(事実発生日の確認ができるもの)
 被保険者が株式会社(特例有限会社を含む。)の役員の場合
  株主総会の議事録(役員選任決議)または役員変更登記の記載がある登記簿謄本の写し
  (事実発生日の確認ができるもの)
  ※その他の法人の役員の場合はこれらに相当する書類

b.60歳以上の方が、退職後1日の間もなく再雇用された場合(この場合は、同時に同日付の資格喪失届の提出が必要です)以下のアとイ両方又はウ

 ア.就業規則、退職辞令の写し(退職日の確認ができるものに限る)

 イ.雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことが分かるものに限る)

 ウ.「退職日」及び「再雇用された日」に関する事業主の証明書
   (事業主印が押印されているものに限る)

c.国民健康保険組合(以下「国保組合」という。)に引き続き加入し、一定の要件に該当する場合等(ただし、国民組合の理事長が認めた場合に限られており、事実日から14日以内に届出を行なう必要があります)
※国民健康保険組合とはいわゆる「組合けんぽ」のことで、組合けんぽに加入している事業所が従業員が採用した場合(通常は、協会けんぽではなく組合けんぽに加入)、もしくは従業員で5人未満の組合けんぽに加入していた個人事業所が、新たに採用して従業員が5人以上になったり、あるいは法人化することにより、強制適用事業所となった場合には、健康保険被保険者適用除外承認を受けて、組合けんぽに加入することができます。具体的には、各組合けんぽのルールによりますが一般的には組合けんぽの「資格取得届」とともに「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を組合事務所に提出し、組合の理事長印が捺印された「健康保険被保険者適用除外承認申請書」が事業所に返送され、年金事務所に提出する「被保険者資格取得届」に組合の理事長印が捺印された「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を添付して申請します。(詳細は、日本年金機構のHP参照 及び加入している組合に確認してください。)

 健康保険被保険者適用除外承認申請書

※やむを得ない理由により14日以内に届出が出来なかった場合は、同時に当該やむを得ない理由を記載した理由書の添付が必要です。やむを得ない理由として認められるのは、以下の場合で、具体的に記入します。

① 天災地変、交通・通信関係の事故やスト等により適用除外申請が困難と認められる場合

② 事業主の入院や家族看護など、適用除外の申請ができない特段の事情があると認められ場合

③ 法人登記の手続きに日数を要する場合

④ 国保組合理事長の証明を受けるための事務処理に日数を要する場合

⑤ 事業所が、離島など交通不便地域にあるため、年金事務所に容易行くことができない場合

⑥ 書類の郵送 (搬送 )に日数を要する場合

⑦その他、事業主の責によらない事由により適用除外の申請ができない事情があると認められる場合


②定時決定

(1)定時決定の概要
 定時決定は、7月1日現在在籍している被保険者について行います。ただし、6月1日以降に資格取得時決定された人や7月・8月・9月に随時改定、産前産後休業終了時改定、育児休業等終了時改定により標準報酬月額の変更が予定されている人は除きます。
 また、標準報酬月額の算定方法はフルタイム就労者と短時間就労者で異なりますが、パートタイマー、アルバイト、契約社員、準社員、嘱託社員等の名称を問わず、フルタイム就労者は正社員及び正社員と同等の労働時間で勤務する人、短時間就労者は正社員より短時間で勤務する人とされています。

(2)提出書類 被保険者報酬月額算定基礎届

(3)提出事由 毎年7月1日に在籍している被保険者全員について提出します。

(4)提出期間 7月1日~7月10日

(5)提出先 事業所の所在地を管轄する年金事務所(日本年金機構の事務センター)

(6)提出方法

 電子申請、郵送、窓口持参

 ※届出用紙によるほか、電子媒体(CD又はDVD)による提出が可能です。

(7)標準報酬月額の決定方法及び算定基礎届の記載方法

a.原則

フルタイム就労者
その月の報酬を計算する基礎となった日数っである支払基礎日数(※1)が17日未満(※2)の月を除き、4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額を報酬月額として標準報酬月額が決定されます。例えば、支払基礎日数が17日以上の月が5月と6月だけなら5月分と6月分報酬の平均、6月だけなら6月分の報酬が月額報酬となります。

(※1)支払基礎日数とは、給料計算の対象となる日数をいいます。日給制の場合は、出勤日数が支払基礎日数となります。月給制や週給制の場合は、給料計算の基礎が暦日により日曜日等の休日も含むのが普通であるため、出勤日数に関係なく暦日数にします。

 例 20日締め25日支払い
 4月給与 3月21日~4月20日⇒31日
 5月給与 4月21日~5月20日⇒30日
 6月給与 5月21日~6月30日⇒31日

 例 月末締め当月25日支払い
 4月給与 4月1日~4月30日⇒30日
 5月給与 5月1日~5月31日⇒31日
 6月給与 6月1日~6月30日⇒30日

ただし、欠勤日数分だけ給料が差し引かれる場合は、就業規則、給与規程等により事業所が定めた日数から欠勤日数を除いた日数となります。(有給休暇の場合は、実際に給与が減額されるわけではないので出勤したものとみなします。)

ここで事業所が定めた日数とは、欠勤控除をする際の基礎となる日数をいいます。従って、支払基礎日数は欠勤控除の定め方に応じて次のようになります。

・月給額/年平均月所定労働日数×欠勤日数
 ⇒支払基礎日数=年平均月所定労働日数ー欠勤日数

・月給額/賃金計算期間の所定労働日数×欠勤日数
 ⇒支払基礎日数=賃金計算期間の所定労働日数ー欠勤日数

・月給額/年平均の歴日数×欠勤日数
 ⇒支払基礎日数=年平均の暦日数ー欠勤日数

・月給額/賃金計算期間の歴日数×欠勤日数
 ⇒支払基礎日数=賃金計算期間の暦日数ー欠勤日数


(記載例 3か月とも支払基礎日数が17日以上のケース)

(記載例 支払基礎日数が17日未満の月があるケース)

短時間就労者
短時間就労者の定時決定は、次の方法により行われます。
なお、短時間就労者とは、パートタイマー、アルバイト、契約社員、準社員、嘱託社員等の名称を問わず、正社員より短時間で勤務する人をいいます。

・4月、5月、6月の3か月間のうち支払基礎日数が17日以上の月が1か月以上ある場合
⇒17日以上の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

(記載例 短時間勤務者で支払基礎日数が17日以上の月があるケース)

・4月、5月、6月の3か月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合
⇒3か月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

(記載例 短時間勤務者で支払基礎日数が15日以上17日未満の月があるケース)

・4月、5月、6月の3か月間のうち支払基礎日数がいずれも15日未満の場合(※)
※ただし、特定適用事業所に勤務する短時間労働者については支払基礎日数が11日以上の月がある場合を除く。(「特定適用事業所に勤務する短時間労働者の特例」参照)
⇒従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定します。記載例はb.例外のフルタイム労働者と同じです。

特定適用事業所に勤務する短時間労働者の特例(※)
※支払基礎日数が15日以上の月がある場合は、通常の短時間勤務者と同じ扱いです。
短時間労働者の定時決定は4月、5月、6月のいずれも支払基礎日数が15日未満11日以上で算定することとなります。
・4月、5月、6月の3か月間のうち支払基礎日数が11日以上の月が1か月以上ある場合

⇒11日以上の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

(記載例 特定適用事業所に勤務する短時間労働者について支払基礎日数が11日以上の月がある場合)



・4月、5月、6月の3か月間のうち支払基礎日数がいずれも11日未満の場合

⇒従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定します。記載例はb.例外のフルタイム労働者と同じです。

b.例外
・フルタイム労働者について、4月、5月、6月の3か月とも支払基礎日数が17日未満(※)の場合は、従前の標準報酬月額にて引き続き標準報酬月額となります。(休職者中であっても標準報酬月額は変更しない)
※特定事業所に勤務しない短時間労働者は15日未満、特定事業所に勤務する短時間勤務者は11日未満

(記載例 支払基礎日数がいずれも月も17日未満である場合)

・通常の定時決定により報酬月額を算定すると、実態とかけ離れる場合は修正して算定します。報酬月額を修正する場合は、次のとおりです。

(ア)4月、5月、6月の3か月間に、3月分以前の給料の遅配分を受けた、又は遡及して昇給したことにより差額を一括して受けた場合
⇒遅配分又は昇給差額分を差し引いて報酬月額を算定します。

(記載例 6月給与に遅配が発生した場合)

(記載例 3月昇給の差額分が4月に支払われた場合)


(イ)4月、5月、6月のいずれかの月に低額の休職給を受けた場合
⇒2か月以下の月が該当する場合は、当該月を除いて報酬月額を算定します。
(記載例 低額の休職給を受けた場合)


(ウ)4月、5月、6月のいずれかの月にストライキによる賃金カットがあった場合
⇒2か月以下の月が該当する場合は、当該月を除いて報酬月額を算定します。
※なお、月額算定基礎届には原則どおり計算した額を⑮平均額の欄に記載し、⑯修正平均額の欄に賃金カットを受けた月を除いた報酬の平均を記載し、⑱備考欄に「9その他(ストライキによる賃金カット○月○日分)」と記載します。(詳細は記載方法で説明します。)


(エ)当年の4月、5月、6月の3か月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額」の間に2等級以上の差を生じた場合であって、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合(いずれも支払基礎日数が17日未満の月を除く。)

⇒前年7月から当年6月までの間に受けた報酬の月平均額から算定した標準報酬月額にて決定します。(「年間報酬の平均で算定することの中立書」及び「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等」の添付が必要となります。日本年金機構の書式)
※Excelファイル拡張子はxlsxなので古いExcelソフトでは開けません。こちらにxls形式(拡張子.xls)のファイルを掲載しました。日本年金機構の新書式の拡張子「.xls」エクセル版

また、年間報酬の平均で算定することの申立書(記載例)

(記載例)

「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等」記入例


(オ)給与計算期間の途中(途中入社月)で資格取得したことにより、4月、5月、6月のいずれかに1か月分の報酬が受けられなかった月がある場合。

⇒当該1か月分の報酬が支給されなかった月を除いて報酬月額を算定します。

(記載例 途中入社があった場合)

・4月、5月、6月の3か月とも無給又は低額の休職給の場合
⇒従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定されます。記載例はb.例外のフルタイム労働者と同じです。

・4月から6月の間に一時帰休(レイオフ※)による休業手当等が支給された場合は、次表のとおり「算定対象月」の平均を報酬月額として定時決定されます。
※業績悪化などの理由で操業短縮を行うにあたり、労働者を在籍のまま一時的に休業させることを「一時帰休」といいます。労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるため、休業期間中、使用者は労働者に対して、平均賃金の60%以上の手当(休業手当)が支払われます。


(8)被保険者報酬月額算定基礎届の書式

正式な名称は、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届 70歳以上被用者 算定基礎届」といい、厚生年金70歳以上被用者該当者 算定基礎届を兼ねています。

 書式のダウンロード:日本年金機構HPからダウンロード こちら

 ※Excelファイル拡張子はxlsxなので古いExcelソフトでは開けません。こちらにxls形式(拡張子.xls)のファイルを掲載しました。日本年金機構の新書式の拡張子「.xls」エクセル版



(9)被保険者報酬月額算定基礎届の記載方法

下の画像をもしくは日本年金機構のHPにある記載例(こちら)を見れば、記載は簡単です。


(10)添付書類
「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額 算定基礎届総括表」
 従業員の状況や就業規則の内容等について記載するものです。日本年金機構のHPの記載例や下記の図を見れば記載方法は簡単ですが、「個人・法人等区分」「本店・支店区分」「内・外国区分」のコードは次のとおりです。また、自社の法人番号がわからない場合はこちらから検索できます。「国税庁 法人番号公表サイト」

「個人・法人等区分」 1.法人 2.個人 3.国・地方公共団体 4.私学共済
「本店・支店区分」   1.本店 2.支店
「内・外国区分」           1.内国法人           2.外国法人


(総括表の様式)

(総括表の記入方法)

「被保険者報酬月額変更届」
 ※7月随時改定(4月に給与改定が行なわれ随時改定の対象となる人等)の被保険者がいる場合のみ

「年間報酬の平均で算定することの申立書」及び「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等」
 ※(7)標準報酬月額の決定方法及び算定基礎届の記載方法で説明した「通常の定時決定により報酬月額を算定すると、実態とかけ離れる場合は修正して算定します。報酬月額を修正する場合」(エ)に該当する被保険者がいる場合のみ。記載方法等は、(7)を参照


③随時改定

(1)提出書類 被保険者標準報酬月額変更届


(2)提出事由
 
次の全ての要件を満たす場合に提出します。
・固定的賃金(※1)に変動があった、または、給与体系の変更があった。
・固定的賃金に変動があった月から継続した3か月間の支払基礎日数がいずれも17日以上(※2、※3)である。
・昇給または降給によって算定した標準報酬月額の等級と現在の等級との間に原則として2等級以上の差がある。


(※1 ) 固定的賃金とは、基本給、役職手当、家族手当、通勤手当、住宅手当などをいう。一方、残業手当、宿直手当、皆勤手当など月によって変動のある賃金を、非固定的賃金という。
(※2) 特定適用事業所に勤務する短時間労働者については、11日以上(特定適用事業所以外に勤務する短時間労働者は17日以上。17日未満の場合は随時改定はありません。)
(※3) 随時改定の対象となるのは、固定的賃金に変動があった月から支払基礎日数が17日以上(※2)の月が3か月継続していることが必要である。1か月でも17日に満たない月がある場合は、随時改定の対象とはならない。

(注意事項)
・随時改定は、標準報酬月額に2等級以上の差が生じたときに行いますが、固定的賃金は増加したが非固定的賃金(残業手当など)が減少したために2等級以上下がった場合や、固定的賃金は減少したが非固定的賃金が増加したために2等級以上上がった場合などは、随時改定には該当しません。つまり、変動の原因となる固定的賃金と変動の結果である3か月の報酬の平均額の変動の方向が同じ場合に、随時改定手続きを行なうことになります。

・休職による休職給を受けた場合は、固定的賃金の変動がある場合には該当しないため、随時改定の対象とはなりません。

・一時帰休(レイオフ)のため、継続して3か月を超えて通常の報酬よりも低額の休業手当等が支払われた場合は、固定的賃金の変動とみなし、随時改定の対象となります。また、一時帰休が解消され、継続して3か月を超えて通常の報酬が支払われるようになった場合も随時改定の対象となります。

・固定的な賃金の変動があり、随時改定の対象となった継続した3か月の間に、さらに固定的な賃金の変動が生じた場合は、それぞれの固定的賃金が変更になった月から継続した3か月の間の平均額で2等級以上の差があれば、随時改定を行います。
(例)1月に資格手当が発生し昇給 2月に役職手当が発生し昇給
 ○1月~3月の報酬の平均月額で従前の標準報酬月額と2等級以上の差が生じていれば
 (当然、2月昇給分も含めて計算)
   ⇒4月に随時改定
 ○2月~4月の報酬の平均月額で4月から改定される標準報酬月額と2等級以上差が生じていれば
   ⇒5月に随時改定

・随時改定は、固定的賃金の変動月から3か月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生ずることが条件ですが、標準報酬月額等級表の上限又は下限にわたる等級変更の場合は、2等級以上の変更がなくても随時改定の対象となります。(下図参照)


(3)提出期限 速やかに

(4)提出先

 事業所の所在地を管轄する年金事務所(日本年金機構の事務センター)

(5)提出方法

 電子申請、郵送、窓口持参

 ※届出用紙によるほか、電子媒体(CD又はDVD)による提出が可能です。

(6)標準報酬月額の決定方法及び月額変更届の記載方法

(記載例 昇給したとき)

(記載例 昇給差額が支給されたとき)

(7)被保険者報酬月額変更届の書式

正式な名称は、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届 厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」といい、厚生年金70歳以上被用者該当者 月額変更届を兼ねています。

 書式のダウンロード:日本年金機構HPからダウンロード こちら

 ※Excelファイル拡張子はxlsxなので古いExcelソフトでは開けません。こちらにxls形式(拡張子.xls)のファイルを掲載しました。日本年金機構の新書式の拡張子「.xls」エクセル版

(9)被保険者報酬月額算定基礎届の記載方法

下の画像をもしくは日本年金機構のHPにある記載例(こちら)を見れば、記載は簡単ですが、短時間労働者及び被保険者区分の変更については、次のとおり記載してください。

ア.特定適用事業所以外の短時間労働者
 備考欄にその旨を記入してください。(例 備考欄に「短時間勤務者」と付記)
イ.特定適用事業所の短時間労働者
 備考欄の「3.短時間勤務者(特定適用事業所等)」に丸を付けてください。
ウ.固定的賃金の変動があった月から、改定月の前の月までに被保険者区分(一般から短時間労働者またはその逆)に変更があった場合は、備考欄に「被保険者区分変更後の賃金が支払われた月」及び「変更後の被保険者区分」を記入してください。
(例 4月に短時間労働者から一般に変更した後、6月に一般から短時間労働者になった場合(当月払い)は、備考欄に「6月 短時間」と記入)
 ※被保険者区分の変更の際には、別途「被保険者区分変更届」の提出が必要となります。

(10)添付書類
 
原則として必要ありませんが、改定月の初日から起算して60日経過した後に届出をする場合、または標準報酬月額が大幅に下がる(※)場合には、以下の添付書類が必要となります。
※「大幅に下がる場合」とは、原則、標準報酬月額の等級が5等級以上、下がる場合をいいます。

a.被保険者が法人の役員以外の場合
・賃金台帳の写し
 固定的賃金の変更があった月の前の月から、改定月の前の月分まで

・出勤簿の写し
 固定的賃金の変動があった月から、改定月の前の月分まで
b.被保険者が株式会社(特例有限会社を含む)の役員の場合
 以下のア.~エ.のいずれか1つ及び所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し(固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで)
ア.株主総会または取締役会の議事録
  (報酬額を具体的に決議している議事録。代表取締役等に決定を一任する決議をしている場合は、議事録の写しでは額が記載されていないので添付書類としても意味がない)
イ.代表取締役等による報酬決定通知書
ウ.役員間の報酬協議書
エ.債権放棄を証する書類
  (役員報酬未払いなどで報酬債権を放棄した結果、大幅な変動が生じた場合)
※その他の法人の役員の場合は、これらに相当する書類


④産前産後休業終了時改定

 産前産後休業を終了し、職場に復帰した際に3歳未満の子を養育している被保険者は、短時間勤務になったり残業をしなくなったりすることで、休業前より給与が減少することがあります。このような場合は、随時改定に該当しなくても、被保険者が申し出ることで、休業終了日の翌日が属する月以降3か月間に受けた報酬の平均額に基づき一定の要件を満たすと、4か月目から標準報酬月額を改定することができます。

(1)提出書類 産前産後休業終了時月額変更届

(2)提出事由
・従前の標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること。

・産前産後後休業終了日の翌日が属する月以後3か月に、支払基礎日数が17日以上(※)の月が1か月以上あること。
※特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上。それ以外の短時間労働者については、3カ月のいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上。(定時改定と同じ考え方です)

産前産後休業終了日の翌日に育児休業を開始している場合は、申出できません。なお、育児休業中は社会保険料の免除制度があります。(日本年金機構HP「育児休業保険料免除制度」参照)同様に、産前産後休業中も社会保険料の免除制度があります。(日本年金機構HP「産前産後休業保険料免除制度」参照 いずれにしても標準報酬月額は変更になりませんが、社会保険料は免除されるという立て付けになります)

(3)提出期限 速やかに

(4)提出先

 事業所の所在地を管轄する年金事務所(日本年金機構の事務センター)

(5)提出方法

 電子申請、郵送、窓口持参

(6)産前産後休業終了時月額変更届の書式

 正式な名称は、「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業終了時報酬月額変更届 厚生年金保険 70歳以上被用者産前産後休業終了時報酬月額相当額変更届」といい、厚生年金保険70歳以上産前産後休業終了時報酬月額相当額変更届を兼ねています。(70歳以上で産前産後休業を取得する人が実際にいるかは謎ですが・・・)

 書式のダウンロード:日本年金機構HPからダウンロード こちら



(7)産前産後休業終了時月額変更届の記入方法

下の画像をもしくは日本年金機構のHPにある記載例(こちら)を見れば、簡単にわかりますが、次の点に注意です。
・被保険者資格取得届と同様に、個人番号(マインバー)の記載は必須ではない。代わりに「②個人番号(年金基礎番号)」の欄に年金基礎番号を記載してもよい。
・短時間労働者である場合は、備考欄の該当項目(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は「3.短時間労働者(特定適用事業所等)」、それ以外の事業所に勤務する短時間労働者は「4.パート」)を丸で囲む。
・固定的な賃金の変動があった月から、改定月の前の月までに被保険者区分(一般から短時間労働者またはその逆)に変更があった場合には、備考欄「5.その他」の欄を丸で囲み、「被保険者区分変更後の賃金が支払われた月」及び「変更後の被保険者区分」を記入する。
(例 4月に短時間労働者から一般に変更した後、6月に一般から短時間労働者に変更となった場合(当月払い)は、備考欄に「6月 短時間」と記入)


(8)添付書類 不要


⑤育児休業等終了時改定

育児休業等(育児休業及び育児休業に準ずる休業)を終了し、職場に復帰した際に3歳未満の子を養育している被保険者は、短時間勤務になったり残業をしなくなったりすることで、休業前より給与が減少することがあります。このような場合は、随時改定に該当しなくても、被保険者が申し出ることで、休業終了日の翌日が属する月以降3か月間に受けた報酬の平均額に基づき一定の要件を満たすと、4か月目から標準報酬月額を改定することができます。

(1)提出書類 育児休業等終了時月額変更届

(2)提出事由

・従前の標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること。

・育児休業等(育児休業及び育児休業に準ずる休業)終了日の翌日が属する月以後3か月に、支払基礎日数が17日以上(※)の月が1か月以上あること。

※特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上。それ以外の短時間労働者については、3カ月のいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上。(定時改定と同じ考え方です)

※※育児休業等を終 了した日の翌日に、引き続いて産前後休業を開始した場合(第一子の育児休業中に第二子を妊娠した場合等)は提出できません 。産前産後休業中及び育児休業中は社会保険料の免除制度があります。(日本年金機構HP「産前産後休業保険料免除制度」参照 「育児休業保険料免除制度」参照いずれにしても標準報酬月額は変更になりませんが、社会保険料は免除されるという立て付けになります)

(3)提出期限 速やかに

(4)提出先

 事業所の所在地を管轄する年金事務所(日本年金機構の事務センター)

(5)提出方法

 電子申請、郵送、窓口持参

(6)育児休業等終了時月額変更届の書式

 正式な名称は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者育児休業等終了時報酬月額変更届 厚生年金保険 70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届」といい、厚生年金保険70歳以上育児休業等終了時報酬月額相当額変更届を兼ねています。(育児休業等については、配偶者や孫養子縁組した場合等想定されるので70歳以上の方が取得することも考えられます)

 書式のダウンロード:日本年金機構HPからダウンロード こちら

(7)育児休業等終了時月額変更届の記入方法

下の画像をもしくは日本年金機構のHPにある記載例(こちら)を見れば、簡単にわかりますが、次の点に注意です。

・被保険者資格取得届と同様に、個人番号(マインバー)の記載は必須ではない。代わりに「②個人番号(年金基礎番号)」の欄に年金基礎番号を記載してもよい。

・短時間労働者である場合は、備考欄の該当項目(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は「3.短時間労働者(特定適用事業所等)」、それ以外の事業所に勤務する短時間労働者は「4.パート」)を丸で囲む。

・固定的な賃金の変動があった月から、改定月の前の月までに被保険者区分(一般から短時間労働者またはその逆)に変更があった場合には、備考欄「5.その他」の欄を丸で囲み、「被保険者区分変更後の賃金が支払われた月」及び「変更後の被保険者区分」を記入する。

(例 4月に短時間労働者から一般に変更した後、6月に一般から短時間労働者に変更となった場合(当月払い)は、備考欄に「6月 短時間」と記入)


人事労務の備忘録(社労士監修)

社会保険労務士が作成する給与計算・社会保険・労働保険・労働法等についての備忘録です。 各種書式、各種手続や法令解釈等について解説しています。

0コメント

  • 1000 / 1000