給与計算
給与計算の概要について、説明します。各論については、随時それぞれのリンクを確認してください。
☆残業手当の計算 https://srnavi.amebaownd.com/posts/4161523
☆標準報酬月額及び標準報酬賞与の算定に含まれる報酬 https://srnavi.amebaownd.com/posts/4229392
☆雇用保険の対象となる賃金 https://srnavi.amebaownd.com/posts/4239323
1.月次の給与計算
①給与体系
「一般的な給与体系」は、東京都労働局による就業規則作成例を基にした給与体系です。手当の内容は会社によって異なるでしょうが、基本給・手当(諸手当)・割増賃金という構造はそれほど大きな差は無いかと思います。
・基本給
基本となる給与で、所定労働日数・所定労働時間勤務すれば原則として支払われる賃金(皆勤手当は除く。)
本人の能力、経験及び職歴等によって定められ、年に数回の定時の給与改定以外では原則として変更しません。
・諸手当
会社の就業規則や給与規程によって定められ、役職手当・家族手当・営業手当・住宅手当・通勤手当など、基本給を補う役割を持つ給与です。これも企業によって名目や額は異なり、給与規程に定められています。 役職や職種の変更、家族の増減、転居などにより、随時変更となることがあります。なお、時間外労働手当や深夜労働手当など、労働時間の増加による賃金はここでは諸手当に含まないものとします。
・割増賃金
所定外労働や休日出勤等により発生する賃金及び法定の時間外・休日・深夜の割増賃金をいいます。
・臨時的な賃金
その他に慶弔見舞金、研修手当、大入り袋や表彰による褒賞金など、臨時的な賃金があります。これは、給与規程等に基づくこともあれば基づかず支給されることもあります。
これらの給与から、社会保険料(厚生年金、健康保険、介護保険及び雇用保険の保険料)と源泉所得税額を算定し、控除額及び控除後支給額を確定させるのが月次給与計算の業務となります。
②控除前総支給額の確定
基本給と諸手当を確定し、割増賃金等を確定し、社会保険料等を控除する前の給与総額(控除前総支給額)を確定させます。特に、人事データの変更や諸手当が割増賃金計算の基礎に該当するかどうかに注意が必要です。
(1)基本給
・給与改定等が無ければ、この支給額は原則として変動はありません。個別に給与改定があった際は、注意が必要です。
(2)諸手当
・役職、転居、家族の変動、資格の取得、個人の業績、出退勤の状況などにより、変動が生じますので、人事データ、業績データや勤怠データを確認する必要があります。
・諸手当には、割増賃金計算の基礎になるものとならないものがあるので、識別しておく必要があります。
☆諸手当A・・・・割増賃金計算の基礎となるもの
諸手当Bに該当しない手当
☆諸手当B・・・・割増賃金計算の基礎とならないもの
労働基準法施行規則21条により定めれている次の手当が該当します。これは例示列挙ではなく限定列挙とされており、ここに列挙されていないものは、全て割増賃金計算の基礎となります。(厚生労働省リーフレット参照)
・家族手当
名称が「扶養手当」や「生活手当」等であっても、実態が「扶養家族数またはこれを基礎とする家族手当額を基礎として算出された手当」については、家族手当に含まれ、割増賃金の基礎に算入されません。 しかし、扶養家族数に関係なく一律に支給される場合は、家族手当と称していても、実質的に家族手当ではないため、通常の賃金として割増賃金の基礎に算入されます。
・通勤手当
労働者の通勤距離または通勤に実際に要する実費に応じて計算され支払われる手当をいいます。一律に一定金額を支給する場合は、実際の距離に対応していませんので、ここでいう通勤手当に該当せず、通常の賃金として割増賃金の基礎に算入されます。なお、一定場合には源泉所得税の計算で非課税となります。
・別居手当
名称が「単身赴任手当」等であっても、通勤の都合により同一世帯の扶養家族と別居を余儀なくされる労働者に対して、世帯が二分されることによる生活費の増加を補うために支給される手当をいいます。
・子女教育手当
労働者の子弟の教育費を補うことを目的に支給されるものが該当します。
・住宅手当
名称が関わらず、住宅に要する費用に応じて(定率を乗じる、段階ごとに支給額を変える等をして)算定される手当。
住宅形態(賃貸か持ち家か)や住宅以外の要素(扶養家族数の有無)で額が変動したり、全員一律支給のものは「除外される住宅手当」に当たりません。なお、社宅の場合には一定の条件を満たすと、源泉所得税の計算で非課税となります。
・1か月を超える期間毎に支払われる賃金
賞与などであり、具体的には、1か月を超える期間の出勤成績によてて支給される精勤手当、1か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当や1か月間を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給または能率手当などが該当します。
・臨時に支払われた賃金(図では「臨時的な賃金」として諸手当Bから分けて記載しています)
慶弔見舞金、研修手当(業務上必要な研修を受けた場合の実費負担)、資格取得手当(資格を取得した際に一時的に支給される手当),大入り袋や表彰に基づく褒賞金など、臨時的、突発的事由に基づいて支払われるもの、および結婚手当等支給条件はあらかじめ確定しているが、支給事由の発生が不確定であり、かつ、非常にまれに発生するものをいいます。(昭22.9.13 発基17号参照)
(3)割増賃金等の計算
割増賃金の計算の詳細については「残業手当の計算」をご確認ください。
勤怠データより、割増賃金及び欠勤や遅刻・早退による控除額を計算します。なお、割増賃金の基礎には、基本給と諸手当Aを利用することになります。
③標準報酬月額の確定及び厚生年金保険料、健康保険保険料及び介護保険保険料の確定
※厚生年金保険料、健康保険保険料及び介護保険保険料は、支給される賃金そのものではなく、標準報酬月額に保険料率を乗じることで算定されます。
(1)標準報酬月額の確定
厚生年金保険料、健康保険保険料及び介護保険保険料は標準報酬月額を基にして計算します。標準報酬月額とは、毎月の報酬(基本給+諸手当+割増賃金等)を区切りの良い幅で区分したものです。(「各都道府県の保険料額表」参照)この報酬に該当するのは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものですが、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは除外されます。(健康保険法3条5項・厚生年金法3条1項)報酬の詳細については「標準報酬月額及び標準報酬賞与の算定に含まれる報酬」をご覧ください。
標準報酬月額は通常4月5月6月の報酬の平均から決定され(定時決定)、当年9月から翌年8月までその標準報酬月額を利用します。ただし、給与に大きな変動があった場合は、途中で標準報酬月額を変更する必要があるため注意が必要です。標準報酬月額を変更する必要があるのは、①固定的な給与(基本給+諸手当)に変更があった、②変動月から3か月間に支給された報酬(基本給+諸手当+割増賃金等:割増賃金等も含む)の平均に該当する標準報酬月額と2等級以上の差が生じた、③3か月とも支払基礎日数が17日以上ある、という3つの要件を全て満たす場合です。(当HP「標準報酬月額の決定と改定」を参照)
従って、前々月に基本給及び諸手当が変更があれば、標準報酬月額に変動が生じる可能性があるので注意が必要です。逆に変更がなければ、要件①を満たさないため標準報酬月額に変動は生じません。
なお、臨時に支払われた賃金については、原則として報酬には含まれませんが、大入袋についてこちらに面白い解説があります。(おおくぼ労務管理事務所「大入り袋とはなんだろう」) ①臨時的であるかどうか、支給事由の発生、原因が不確定なものであり、極めて狭義に解するものとすることされ、例年支給されていないか、支払われる時期が決まっていないかで判断し、②恩恵的かどうかは、社会通念上での判断します。①か②のいずれかの該当すれば標準報酬月額の算定に加える必要はないようです。慶弔金は恩恵的なもので②に該当、表彰に基づく報奨金及び資格取得手当(資格を取得した際に一時的に支給される手当)は例年支給されておらず突発的なものであれば①に該当すると思われます。
(2)年齢による各保険の資格の取得・喪失
※定年制を採用している会社でも、介護保険の加入は40歳なので要注意です。
・厚生年金
70歳に達すると、厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。70歳の誕生日の前日に被保険者資格を喪失し(退職の際は、退職日の翌日が喪失日となる)、保険料は資格喪失日の属する月の前月分まで発生します。従って、誕生日が4月1日なら資格喪失日が3月31日で、2月分までが控除の対象となります。
・健康保険
75歳に達すると、健康保険の被保険者資格を喪失します。75歳の誕生日の当日に被保険者資格を喪失し、保険料は資格喪失日の属する月の前月分まで発生します。従って、誕生日が4月1日なら資格喪失日が4月1日で、3月分までが控除の対象となります。
・介護保険
40歳に達したとき、介護保険費保険者資格を取得します。40歳に達したとは、40歳の誕生日の前日をいい、その日が属する月より介護保険の被保険者となり、その月より保険料が発生します。従って、誕生日が4月1日なら資格取得日が3月31日で、3月分より控除の対象となります。
65歳に達すると、介護保険の被保険者を喪失します。65歳に達したときは、65歳の誕生日の前日をいい、保険料は資格喪失日が属する月まで発生します。従って、誕生日が4月1日なら資格喪失日が3月31日で、3月分までが控除の対象となります。
(3)保険料額の確定
※いずれも会社と労働者が折半して負担しますが、保険料額表を用いることで直接従業員の負担額を計算できます。
・厚生年金保険保険料
こちらから「厚生年金保険料額表」を参照して(厚生年金基金に加入があるかどうかで、表が異なるため注意)、確定した標準報酬月額に該当する厚生年金保険料の「折半額」の欄が給与から控除する額となります。なお、料率から計算する場合は、「厚生年金保険料額表」の「折半額」の欄に記載された料率を標準報酬月額に乗じれば求まります。
・健康保険料及び介護保険料
加入している健康保険の種類(「協会けんぽ」かそれ以外か)によって異なります。
☆協会けんぽ(全国保険協会管掌保険)に加入している場合
こちらから各都道府県の「健康保険・厚生年金の保険料額表」を参照しますが、どの都道府県を選択するか注意が必要です。本社で一括して申請している場合は、本社が所属する「協会けんぽ都道府県支部」の都道府県を選択し、各事業所毎で申請している場合は、その事業場が所属する「協会けんぽ都道府県支部」の都道府県を選択します。なお、従業員がどの都道府県支部に所属しているかは、健康保険証の「保険者名称」欄に「全国健康保険協会○○支部」と記載されており、その○○に入る都道府県名が適用される「協会けんぽ都道府県支部ごとの保険料率」を表します。
選択した都道府県の「健康保険・厚生年金の保険料額表」(この表には、厚生年金基金に加入していない場合の厚生年金保険料も記載されてます)から、確定した標準報酬月額に該当する「健康保険・厚生年金の保険料額表」の「折半額」の欄が給与から控除する額となりますが、介護保険に加入していない従業員は「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」、介護保険に加入している従業員は「介護保険第2号被保険者に該当する場合」が適用されます。(つまり、「介護保険第2号被保険者に該当する場合」の「折半額」には従業員が負担する健康保険料と介護保険料の両方が含まれています。)
また、料率から計算する場合は、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」「介護保険第2号被保険者に該当する場合」のそれぞれの欄の上段に記載された料率を標準報酬月額に乗じれば求まります。なお、「健康保険・厚生年金の保険料額表」に記載された折半額や料率から計算した際の端数については、50銭以下は切り下げ、50銭を超える場合は切り上げます。(例 1円50銭⇒1円、1円51銭⇒2円)
☆協会けんぽに加入していない場合
加入している各健康保険組合に保険料を照会して計算することになりますが、協会けんぽと同様に各健康保険組合の「健康保険の保険料額表」をホームページで公表しているケースがもあります。料率が異なるだけで、考え方は協会けんぽと変わりありません。
※健康保険料と介護保険料の控除項目の区別について
健康保険料と介護保険料は、標準報酬月額×(健康保険料率+介護保険料率)/2を計算し(「健康保険・厚生年金の保険料額表」に記載されている金額も同額が記載されている)、端数処理をして求めた従業員負担額を給与から控除することになるため、控除項目としては「健康保険料(介護保険料を含む)」と記載すれば差し支えありません。しかし、昔から支給項目として「介護保険料」が残っている場合はどのように記載すればいいかちょっと悩むところですが、次のように計算すると間違えありません。
・健康保険料 yを健康保険料の控除額とする。
x=標準報酬月額×健康保険料率/2
y=xを端数処理した額(50銭以下は切り下げ、50銭を超える場合は切り上げ)
・介護保険料 uを介護保険の控除額とする。
z=標準報酬月額×(健康保険料率+介護保険料率)/2
t=zを端数処理した額(50銭以下は切り下げ、50銭を超える場合は切り上げ)
※tは健康保険料と介護保険料を合算した本来の控除額(「健康保険・厚生年金の保険料額表」を端数処理したものと同額)
u=y-t
※端数処理したものの差を取っているので、端数が生じることはない。
(4)産前産後休業及び育児休業期間中の社会保険料免除
産前産後休業及び育児休業の期間中については、厚生年金保険料及び健康保険料の免除制度があり、その期間中の給与からは社会保険料の控除を行いません。なお、事業主は「産前産後休業取得者申出書」または「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構に提出する必要があります。(協会けんぽ以外の場合は、それぞれの健康保険組合にも同様の申出書を提出します)
日本年金機構HP「育児休業保険料免除制度」「産前産後休業保険料免除制度」参照
④雇用保険保険料の確定
※雇用保険保険料は、標準報酬月額ではなく、支給される賃金そのものに保険料率を乗じて計算します。なお、労使の負担額は折半ではありません。
(1)高年齢者の雇用保険料免除制度
平成29年1月1日より、65歳以上の雇用保険の適用対象となりましたが(「高年齢被保険者」となります)、この改正には3年間の猶予措置が設けられ(本人負担分も事業主負担分も免除)、平成32年4月からは4月1日時点で64歳以上の高年齢者についても給与から雇用保険料の控除が必要となります。逆に言えば、平成31年度までは4月1日時点で64歳以上の高年齢者から雇用保険料を徴収する必要はありません。厚生労働省「雇用保険の適用拡大等について」参照
(2)雇用保険料算定の対象となる賃金
雇用保険料算定の対象となる賃金は、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)とされています。(雇用保険法4条4項)
基本的には、臨時的な賃金も含めて(ここでは月次の給与計算なので、賞与については考慮しませんが賞与からも雇用保険料を控除します)全ての給与が該当しますが、①実費弁償的なもの(研修手当(業務上必要な研修を受けた場合の実費負担)や出張旅費など)及び②恩恵的なものは(慶弔見舞金)は除外されます。なお、「労働の対償」とは現実に提供された労働に対して支払われるもののみを意味するものではなく、一般に、契約その他によってその支給が事業主の義務とされるものを意味すると解されています。
雇用保険料の算定対象については「雇用保険の対象となる賃金」を参照
(3)雇用保険料の確定
こちらから、適用する雇用保険の保険料率(労働者負担)をまず確認します。一般の事業、農林水産・清酒製造の事業・建設の事業によって、保険料率が異なるので注意が必要です(平成30年度:一般の事業3/1000・農林水産・清酒製造の事業4/1000・建設の事業4/1000)。そして、雇用保険料算定の対象となる賃金にその雇用保険料率を乗じて、端数処理(50銭以下を切り捨て・50銭超えを切り上げ)すると、雇用保険料が確定します。
これで、給与から控除する社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料・雇用保険料)が確定します。
⑤源泉所得税の確定
※給与の総額から、社会保険料控除額及び非課税となる手当を差し引いた額から、源泉所得税額が確定します。
(1)源泉所得税から非課税となる主な諸手当
ここでは、臨時的な賃金も諸手当に含めて考えます。次に掲げるのは一般的に非課税となる手当です。なお、その他にも非課税となるものがありますので、疑問に思う場合は個別に最寄の税務署や税理士に確認してください。(こちら及びこちらを参照。細かい項目がたくさんあります)
慶弔見舞金など
慶弔見舞金等は、内容及び金額が社会通念上相当と認められるもの及び社内規定に基づくものであれば非課税となります。なお、お誕生日の祝金なるものは社会通念上相当と認められていないようです。
通勤手当
通勤手当は、一定金額まで非課税となります。対象になる通勤費は電車やバスだけでなく、自動車や自転車なども含まれます。それぞれの非課税限度額は次のとおりです。国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」参照
電車やバス:最も経済的・合理的な経路で通勤した際の通勤費まで
マイカーや自転車:片道の通勤距離に対しての限度額まで(※片道2キロ未満は全て課税となります。)
非課税限度額を超えて支給する場合には、その分は課税対象となります。なお、非課税になる通勤費の上限額は最高で15万円まです。
転勤費用・出張費用
仕事上の都合で転勤や旅行が必要になる場合は、そのために支給される手当等が非課税所得として扱われます。ただし、非課税の範囲は通常必要とされる費用までであり、それを超える部分は課税対象となります。なお、この手当が通常必要とされる範囲内であるかは、①支給額が従業員や役員などを通じた適正基準によって支給されている、②支給額が同業種、同規模の他企業と比べて一般的な支給額に相当する認められる、によって判断されます。他社とも比較して適正な転勤費用・出張費用であるか、客観的に見て旅行の目的や目的地、交通手段等も通常必要とされるものかがポイントとなります。なお、適正基準によって支給されているとは、転勤費用・出張費用について社内規定が設けられていることを意味しています。
宿直手当・日直手当
医療機関等で、宿直や日直といった勤務形態がある場合、これらによって生じた宿直料・日直料も原則として課税所得として扱われます。しかし、次a.~c.の宿直料や日直料を除き、「勤務1回につき宿直料や日直料4,000円までの部分」は非課税となります。(宿直手当は、宿直という労務への見返りとしての性質を有するため給料等と考えるのが原則ですが、宿直勤務時に従業員が負担するであろうと想定される諸費用(食事代、洗面用具等消耗品代)については課税すべきでないとの配慮から非課税となっています。従って、休日や夜間の留守番を含めた勤務を条件で雇用された社員、宿日直をその社員の通常の勤務時間内の勤務として行う場合、宿日直を行ったことに対し代休が与えられる場合は非課税とはなりません。)
a.休日又は夜間の留守番だけを行うために雇用された者及びその場所に居住し、休日又は夜間の留守番をも含めた勤務を行うものとして雇用された者に当該留守番に相当する勤務について支給される宿直料又は日直料
b.宿直又は日直の勤務をその者の通常の勤務時間内の勤務として行った者及びこれらの勤務をしたことにより代日休暇が与えられる者に支給される宿直料又は日直料
c.宿直又は日直の勤務をする者の通常の給与等の額に比例した金額又は当該給与等の額に比例した金額に近似するように当該給与等の額の階級区分等に応じて定められた金額(以下この項においてこれらの金額を「給与比例額」という。)により支給される宿直料又は日直料(当該宿直料又は日直料が給与比例額とそれ以外の金額との合計額により支給されるものである場合には、給与比例額の部分に限る。)
このようにその勤務が宿直もしくは日直として認められる場合に限り、1勤務当たり4,000円(宿直又は日直の勤務をすることにより支給される食事がある場合には、4,000円からその食事の価額を控除した残額)までは非課税所得として扱われます。もし仮に宿直料・日直料として支給されていても、上記のa.~c.のいずれかに該当する場合は課税所得として扱われます。
通常の給与に加えて支給される研修手当
従業員の資格取得や知識・技術向上のために金が支給される手当ですが、こうした「研修手当」も以下のような条件を満たす場合、非課税所得として扱ってよい決まりになっています。
・業務遂行上の必要に基づき、職務に直接必要な技術・知識の習得または免許・資格の取得等を目的とすること
・通常の給与に上乗せされて支給されること
・役員に支給されていないこと(法人の場合)
・役員や従業員の関係者のために支給されていないこと(法人の場合)
・親族のために支給されていないこと(個人事業の場合)
・従業員の関係者のために支給されていないこと(個人事業の場合)
このことから仮に本来支給される給与額を減らしたうえで、その分を研修手当としても非課税所得としては扱われません。(そもそも半ば強制的に研修等を受けさせる場合は、労働にあたりますので通常の給与を支払う必要があります。例えば、休日に半ば強制的に研修を行い業務扱いとせずに、賃金よりも安価な研修手当を支給することは違法です。)あくまで通常支給される給与に上乗せして支給されている場合に限って、その部分が非課税所得として扱われます。また、その額も費用として適正なものに限られますので実費相当額が限度となります。(こちらのリンクの「課税しない経済的利益……使用人等に対し技術の習得等をさせるために支給する金品」を参照)
(参考)社宅(借り上げ社宅を含む)の賃料の扱い
※単なる住宅手当は非課税の手当ではありません。
※社宅の賃料を一切を徴収していない場合は「賃料相当額」、「賃料相当額」の50%以上を賃料を従業員から徴収していない場合は「賃料相当額」ー賃料を源泉所得税を逆に源泉所得税算定の対象となる給与として加算する必要があります。(当たり前ですが、給与として加算して支給するわけではありません。)
社宅を従業員に賃貸している場合は、次の賃料相当額を受け取っていれば、社宅利用による経済的な利益は給与として課税されません。なお、従業員に無償で貸与する場合には、この賃貸料相当額が給与として課税されます。また、従業員から賃料相当額より低い賃料を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。しかし、使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。(こちらを参照)
賃貸料相当額とは、次の(1)~(3)の合計額をいいます。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
自社物件であれば、固定資産税額の課税標準額は簡単にわかり賃料相当額の計算は簡単ですが、借上げ社宅の場合は家主の協力が無いと課税標準額を知ることは困難です。そこで、一つの目安としては、借り上げ社宅の賃料の50%以上を本人から徴収していれば、まず問題無いかと思います。(賃料相当額が賃料相場を上回ることはまずありません)
(2)源泉所得税算定の対象額(社会保険料等控除後の給与等の金額)の確定
これで、源泉所得税算定の対象となる金額が確定します。次の額となります。
源泉所得税算定の対象額=給与の総額ー社会保険料控除額ー非課税手当の総額
※社宅の賃料を一切を徴収していない場合は「賃料相当額」など、課税対象となる現物支給があればこれに加算します。
(3)源泉所得税額の確定
国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から、源泉所得税を確定します。(リンクは平成30年度です。年度ごとに変わるので注意!)なお、この表を適用する際に扶養親族等の人数が必要となります。
月・半月・10日で支払う場合は、「月額表」を使用します。月額表には、「甲欄」と「乙欄」があり、甲欄は、「給与所得の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人に使用します。乙欄は、、「給与所得の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(2か所以上から給与の支払いを受ける人など)に使用します。
甲欄を使用する場合は、源泉所得税算定の対象額に該当する金額の「社会保険料等控除後の給与等の金額」を探し、該当する「扶養親族等の人数」(給与計算対象者の扶養親族等の人数)が交わる部分の金額が、源泉所得税額となります。
なお、所得税は1月から12月の1年間の所得で確定します。従って、毎月の給与から控除する源泉所得税は、仮の税額となり、最終的には年末調整で精算されることとなります。
⑥控除後の支給額の確定
※給与の総額から社会保険料、源泉所得税、住民税を控除後の支給額が確定します。ここまでは、ほとんどどこの会社でも同じですが、それ以外に給与天引きするものがある場合は、ここからさらに控除して実際の振込額が確定することになります。
賃金は、直接労働者に支払われるのが原則(賃金全額払いの原則 労働基準法24条)ですが、その例外として「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合」が認められています。そして、この「法令に別段の定めがある場合」として認められているのが、これまでに計算して来た、社会保険料、源泉所得税とこの住民税となります。従って、この3つについては労使協定が無くとも給与から控除することが認められています。
(1)住民税の控除
住民税については、特に計算をする必要はありません。従業員の住所地である市区町村から送られてくる特別徴収税額通知書で通知される住民税額を、毎年6月~翌年5月まで控除します。なお、住民税は市町村民税(特別区民を含む)と道府県民税(都民税を含む)の総称で、それぞれ市町村区と都道府県に対して納付する税金で、会社は、従業員の給与から住民税を徴収して納付しなければならない義務があり、これを特別徴収といいます。一方、本人が直接治める方法を普通徴収といいます。なお、一定の例外除いて普通徴収は認めれません。
(2)控除後支給額の確定
住民税を控除すれば、控除後支給額が確定します。
控除後支給額=給与の総額ー社会保険料控除額ー源泉所得税額ー住民税額
なお、持株会費、組合費や社内販売費などその他に給与から天引きする費用がある場合は、ここからさらに控除して、実際の給与振込額が確定しますが、社会保険料、源泉所得税及び住民税以外のものを給与天引きする場合は、別途労使協定(給与控除に関する協定書)が必要となります。
2.賞与計算
①賞与計算の基本
(1)社会保険料等の控除
賞与を支払うとき、賞与額から、社会保険料(厚生年金保険の保険料、健康保険・介護保険の保険料)、雇用保険料及び源泉所得税を控除します。
(2)社会保険料の計算
被保険者に支給する賞与額から1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額といいます。(例 賞与額356,989円 標準賞与額356,000円)労働の対償として支払われす賞与・期末手当・決算手当など、その名称を問わず実質的に同じ性質をもち、年間の支給回数が3回以下のものは、すべて標準賞与の対象となります。社会保険料は、標準賞与額に各保険料率を掛けて計算します。(適用する保険料率は月次の給与計算と同じになりますが、標準報酬月額毎の折半額等は記載されていないため、厚生年金保険及び健康保険のそれぞれの料率(折半額の欄)を直接乗じて求めます。なお、健康保険については、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」「介護保険第2号被保険者に該当する場合」によって料率が異なるので注意が必要です。)
保険料率の確認
厚生年金保険:日本年金機構HP「厚生年金保険料額表」(折半額(=控除額)が直接求まる料率の記載がある)
健康保険:
協会けんぽ加入の場合:協会けんぽHP「都道府県毎の保険料額表」(※)
組合健保の場合:加入している各健康保険組合に確認(協会けんぽのように保険料額表が用意されているケースが多い)
(※)折半額(=控除額)を求めるためには、記載された保険料率/2を用いなければならない。
計算例 東京都:35歳 賞与額356,989円 厚生年金基金加入なし
標準賞与額=356,000円
厚生年金保険料控除額=356,000円×0.0915=32,574円
健康保険保険料控除額=356,000円×0.099/2=17,622円
(3)雇用保険料の計算
給与計算の際と同じように、雇用保険料を求めるときは、賞与額(総支給額)に雇用保険料率を乗じて計算します。なお、雇用保険料率は給与計算の際と同じ料率(労働者負担の欄)となります。
雇用保険料率の確認:厚生労働省HP「雇用保険料率について」
(平成30年度:一般の事業3/1000・農林水産・清酒製造の事業4/1000・建設の事業4/1000)
計算例 賞与額356,989円 一般の事業
雇用保険控除額=356,989円×3/1000=1070.967円≒1071円(50銭超えは切上げ)
(4)源泉所得税の計算
賞与の源泉所得税を計算するためには、まず、前月の給与の課税支給額から社会保険料等を控除した後の課税対象額を把握します。所得税の税率は、前月の課税対象額と、控除対象扶養親族等の数を「賞与に対する源泉徴収額の算出率表」に当てはめて求めます。そして、その税率を、賞与額から社会保険料等を控除した賞与の課税対象額に掛けて、所得税を計算します。(算出率表から適用税率を求める際は前月の課税対象額を用い、実際の源泉所得税額の計算には賞与の課税対象額を用います。くれぐれも賞与の課税対象額を算出率表に当てはめないように注意してください)
平成30年の算出表はこちら(国税庁HP「平成30年源泉徴収税表」) ※毎年変わります
計算例 賞与額356,989円 扶養家族1名 支給月平成30年6月 平成30年5月給与の課税対象額190,564円
賞与の金額に乗ずるべき率2.042%
源泉所得税額=(356,989-32,574-17,622-1071)×0.02042=6242.84円≒6,242円(源泉所得税は1円未満切捨て)
※1円未満切捨ての根拠は「国等の再建債務等の金額の端数計算に関する法律」第2条2項のようです。ちなみに年度更新際に労働保険料を分納にすると1円未満が生じるため、最初の支払い時に1円多く支払う根拠は本法の第3条のようです。
②賞与からの控除の例外
(1)退職する月に支払われる賞与
退職日の翌日(資格喪失日)が属する月に支給される賞与は、社会保険料控除の対象とはなりません。ただし、雇用保険料、所得税は控除の対象となります。
例 賞与支給日6月20日
6月20日退職日 ⇒ 退職日の翌日6月21日 ⇒ 社会保険料控除の対象とならない
6月30日退職日 ⇒ 退職日の翌日7月1日 ⇒ 社会保険料控除の対象となる
(2)賞与支払い月に40歳に達する被保険者がいるとき
賞与支払い月に40歳に達する被保険者へ支払う賞与からは、介護保険料を控除します。ただし、給与の場合は、原則、前月分の保険料を控除するため、40歳に達した月に支払われる給与からは、介護保険料を控除しません。
なお、40歳に達する日とは誕生日の前日をいいます。
例 賞与支給日6月20日(前月分の保険料を当月の給与から控除する場合)
40歳になる人の誕生日6月1日 ⇒ 40歳に達する日5月31日 ⇒ 6月給与・賞与いずれも介護保険料を控除
40歳になる人の誕生日6月2日 ⇒ 40歳に達する日6月1日 ⇒ 賞与のみ介護保険料を控除
40歳になる人の誕生日6月22日 ⇒ 40歳に達する日6月21日 ⇒ 賞与のみ介護保険料を控除
40歳になる人の誕生日7月1日 ⇒ 40歳に達する日6月30日 ⇒ 賞与のみ介護保険料を控除
40歳になる人の誕生日7月2日 ⇒ 40歳に達する日7月1日 ⇒ 6月給与・賞与いずれも介護保険料の控除なし
(3)賞与支払い月に65歳に達する被保険者がいるとき
賞与支払い月に65歳に達する被保険者へ支払う賞与からは、介護保険料を控除しません。ただし、給与の場合は、原則、前月分の保険料を控除するため、65歳に達した月に支払われる給与からは、介護保険料を控除します。
なお、65歳に達する日とは誕生日の前日をいいます。
例 賞与支給日6月20日(前月分の保険料を当月の給与から控除する場合)
65歳になる人の誕生日6月1日 ⇒ 65歳に達する日5月31日 ⇒ 6月給与・賞与いずれも介護保険料を控除なし
65歳になる人の誕生日6月2日 ⇒ 65歳に達する日6月1日 ⇒ 6月給与のみ介護保険料を控除
65歳になる人の誕生日6月22日 ⇒ 65歳に達する日6月21日 ⇒ 6月給与のみ介護保険料を控除
65歳になる人の誕生日7月1日 ⇒ 65歳に達する日6月30日 ⇒ 6月給与のみ介護保険料を控除
65歳になる人の誕生日7月2日 ⇒ 65歳に達する日7月1日 ⇒ 6月給与・賞与いずれも介護保険料の控除
(4)産前産後休業及び育児休業期間中の賞与
産前産後休業及び育児休業の申出をした社会保険料の免除期間中に支払う賞与は、毎月の社会保険料と同様、社会保険料が免除されます。ただし、雇用保険料及び所得税は控除の対象となります。
③特別な賞与の計算
(1)賞与額の上限を超えた場合
健康保険の保険料は、標準賞与額の年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計が573万円を超えた場合、その超えた部分については保険料がかかりません。また、厚生年金保険の保険料は、1回当り150万円を超えた場合、その超えた部分については保険料がかかりません。ただし、「健康保険厚生年金保険被保険者賞与支払届」は、実際に支払われた賞与額(1,000円未満切捨て)を記入して提出する必要があります。
※「健康保険厚生年金保険被保険者賞与支払届」については、日本年金機構HP「従業員に賞与を支給したときの手続」を参照
例 平成30年 6月20日 賞与支給額2,869,845円
平成30年12月20日 賞与支給額3,187,984円
6月賞与 標準報酬賞与額 厚生年金保険料1,500,000円 健康保険料2,869,000円
12月賞与 標準報酬賞与額 厚生年金保険料1,500,000円 健康保険料2,861,000円(※)
(※)標準賞与額の年度累計なので、5,730,000円-2,869,000円=2,861,000円となります。5,730,000円ー2,869,845円=2,860,155円≒2,860,000円ではありません。
(2)前月給与がない場合
賞与の源泉所得税は、前月の課税対象額を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて求めますが、前月の給与がない場合は、毎月の給与で用いる「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて計算します。
このようなケースは、入社したばかりで前月の給与がない場合、病気もしくは負傷による休業または育児休業・介護休業等で前月の給与が社会保険保険料等の金額以下で総支給額が控除額を下回り前月の課税対象額がない場合などが考えられます。
計算方法
※算定方法としては、少々大雑把ですが最終的には年末調整で精算されることになります。
(1)賞与の計算の基礎となる期間に応じて「月額の課税対象みなし額」次のとおりとします
賞与の計算の基礎となる期間が6か月以内の場合
月額の課税対象みなし額=賞与から社会保険料等を引いた金額×1/6
賞与の計算の基礎となる期間が6か月を超える場合
月額の課税対象みなし額=賞与から社会保険料等を引いた金額×1/12
(2)月額の課税対象みなし額と控除対象扶養親族等の数を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて、「月額の源泉所得税みなし額」を求めます。
※「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」ではないことに注意。
(3)賞与の計算の基礎となる期間に応じて「賞与から控除する所得税額」を次のとおりとします。
賞与の計算の基礎となる期間が6か月以内の場合
賞与から控除する源泉所得税額=月額の源泉所得税みなし額×6
賞与の計算の基礎となる期間が6か月を超える場合
賞与から控除する源泉所得税額=月額の源泉所得税みなし額×12
計算例 東京都35歳 賞与額769,886円 厚生年金基金加入なし 扶養家族なし 支給月平成30年6月
賞与の計算の基礎となる期間が6か月以内 一般の事業
標準賞与額=769,000円
厚生年金保険料=769,000円×0.0915=70,363.5円≒70,363円(50銭以下切捨て)
健康保険料=769,000円×0.099/2=38,065.5円≒38,065円(50銭以下切捨て)
雇用保険料=769,886円×3/1000=2,309.658円≒2,310円(50銭超え切り上げ)
よって、賞与から社会保険料等を引いた金額=769,886円-70,363円-38,065円-2,310円=659,142円
従って、月額の課税対象みなし額=659,142円/6=109,875円
従って、給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を適用すると月額の源泉所得税みなし額1,240円
∴賞与から控除する源泉所得税額=1,240円×6=7,440円
(随分と低額ですが、最終的には年末調整で精算されます)
(3)前月給与の10倍相当を超える場合
賞与の額が、前月の給与の課税支給額から社会保険料等を控除した後の課税対象額の10倍に相当する金額を超えることがあります。
この場合は、前月給与がない場合と同様に、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて計算します。
計算方法
(1)賞与の計算の基礎となる期間に応じて「月額の課税対象みなし額」次のとおりとします
賞与の計算の基礎となる期間が6か月以内の場合
月額の課税対象みなし額=賞与から社会保険料等を引いた金額×1/6+前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額
賞与の計算の基礎となる期間が6か月を超える場合
月額の課税対象みなし額=賞与から社会保険料等を引いた金額×1/12+前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額
(2)月額の課税対象みなし額と控除対象扶養親族等の数を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて、「月額の源泉所得税みなし額」を求めます。
※「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」ではないことに注意。
(3)賞与の計算の基礎となる期間に応じて「賞与から控除する所得税額」を次のとおりとします。
賞与の計算の基礎となる期間が6か月以内の場合
賞与から控除する源泉所得税額=(月額の源泉所得税みなし額-前月給与に対する源泉徴収額)×6
賞与の計算の基礎となる期間が6か月を超える場合
賞与から控除する源泉所得税額=(月額の源泉所得税みなし額-前月給与に対する源泉徴収額)×12
計算例 東京都35歳 賞与額997,886円 厚生年金基金加入なし 扶養家族なし 支給月平成30年6月
賞与の計算の基礎となる期間が6か月以内 一般の事業 前年の社会保険料等控除後の給与の額98,889円
前月給与から控除された源泉所属税額640円
標準賞与額=997,000円
厚生年金保険料=997,000円×0.0915=91,225.5円≒91,225円(50銭以下切捨て)
健康保険料=997,000円×0.099/2=49,351.5円≒49,351円(50銭以下切捨て)
雇用保険料=997,886円×3/1000=2993.658円≒2,994円(50銭超え切り上げ)
よって、賞与から社会保険料等を引いた金額=997,886円-91,225円-49,351円-2,994円=854,316円
従って、月額の課税対象みなし額=854,316円×1/6+98,889円=241,275円
従って、給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を適用すると月額の源泉所得税みなし額6,210円
∴賞与から控除する源泉所得税額=(6,210円-640円)×6=33,420円
なお、前年の社会保険料等控除後の給与の額98,889円から基本どおり計算すると、34,890円となる。