労働法の全体像1~労働者とは?

労働基準法上の労働者

労働基準法による保護を受けるためには、労働基準法上の「労働者」に該当する必要がある。これは単に労働基準法の適用だけにとどまらず、労働基準法を基礎とした労働関係諸法規(男女雇用機会均等法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法、育児介護休業法、労働者派遣法、雇用保険法、雇用対策法など)の適用範囲を定める概念としても用いられる。

まず、労働基準法は、①事業に使用される者で、かつ、②賃金を支払われる者を労働者としている(労働基準法9条)。そして、これにあたる場合でも、(1)同居の家族のみを使用する事業に使用される労働者、及び、(2)家事使用人は、労働基準法の適用範囲から除外している(労働基準法116条2項)。

従って、労働基準法上の労働者に該当するためには少なくとも、

 ①使用される=「使用者の指揮命令を受け働いていること」

 ②賃金を支払われる=「労働の対償として報酬を得ていること」

(労基法上の「賃金」:労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの(労基法11条))

の2つの要件を備える必要がある。

しかし、2つの要件だけでは一般的過ぎるため、厚生労働省にある労働基準法研究会は1985年(昭和60年)に労働者の備える性質(労働者性)について、次のような判断基準を提示し、これらの要素を勘案して、総合的に労働性を判断する必要があるとしている。

労働基準法研究会報告

1.使用性

①仕事の依頼等への許諾の自由の有無(許諾の自由があれば使用性は弱まる)

②業務遂行上の指揮監督の有無(指揮監督が無いと使用性は弱まる)

③勤務時間・勤務場所の拘束性の有無(時間や場所の拘束性が無いと使用性は弱まる)

④他人による代替性の有無(他人によって代替可能であれば使用性は弱まる)

2.賃金性

⑤報酬が時間単位で計算されるなど労務提供の時間の長さに応じて報酬額が決まる場合は、賃金性が強くなり、逆に時間ではなく仕事の成果に対して報酬が支払われている場合は賃金性が弱くなる。

3.補強要素(使用性と賃金性だけは判断が困難な場合)

⑥事業性の有無(機械・器具の負担、報酬の高額性)

⑦専属性の程度(他社の業務への従事が事実上制限されているか)

⑧公租公課の負担(給与所得の源泉徴収や社会保険料等の控除の有無)


これらの要素が勘案された判例

関西医科大学研修医(損害賠償)事件(2001.8.29/大阪地堺支)

①②③④⑥⑦⑧が勘案されている。

(判決理由 抜粋)

 労働基準法が労働法規における一般法であることからすると、私立学校教職員共済法14条1項本文にいう「使用される者」は、労働基準法9条にいう「使用される者」と同義に解するのが相当であるから、私立学校教職員共済法14条1項本文にいう「使用される者」に該当するか否かは、「労働者」(労働基準法9条)に該当するか否かによって判断されるのが相当である。
 そして、「労働者」に該当するか否かの判断に当たっては、(イ)仕事の依頼、業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無、(ロ)業務遂行上の指揮監督の有無、(ハ)場所的・時間的拘束性の有無、(ニ)労務提供の代替性の有無、(ホ)業務用器具の負担関係、(ヘ)報酬が労働自体の対償的性格を有するか否か、(ト)専属性の程度-他の業務への従事が制度上若しくは事実上制約されているか、(チ)報酬につき給与所得として源泉徴収を行っているか等を総合的に考慮して判断されるべきである。

関西医科大学研修医(損害賠償)事件


新宿労働基準監督署長(映画撮影技師)事件(2002年7月11日/東京高)

②⑤①③④⑥⑦⑧が勘案されている。

(判決理由 抜粋)

 労災保険法の保険給付の対象となる労働者の意義については、同法にこれを定義した規定はないが、同法が労基法第8章「災害補償」に定める各規定の使用者の労災補償義務を補填する制度として制定されたものであることにかんがみると、労災保険法上の「労働者」は、労基法上の「労働者」と同一のものであると解するのが相当である。そして、労基法9条は、「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定しており、その意とするところは、使用者との使用従属関係の下に労務を提供し、その対価として使用者から賃金の支払を受ける者をいうと解されるから、「労働者」に当たるか否かは、雇用、請負等の法形式にかかわらず、その実態が使用従属関係の下における労務の提供と評価するにふさわしいものであるかどうかによって判断すべきものであり、以上の点は原判決も説示するところである。
 そして、実際の使用従属関係の有無については、業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容、支払われる報酬の性格・額、使用者とされる者と労働者とされる者との間における具体的な仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由の有無、時間的及び場所的拘束性の有無・程度、労務提供の代替性の有無、業務用機材等機械・器具の負担関係、専属性の程度、使用者の服務規律の適用の有無、公租などの公的負担関係、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断するのが相当である。〔中略〕

新宿労働基準監督署長(映画撮影技師)事件


近年の裁判例は、このように労働基準法研究会報告で提示された要素のうちいくつかを勘案して、労働性を決する傾向にある。なお、労働基準法上の労働性が争われた例を類型別にみると、①業務遂行について裁量性が高い者、②零細下請業者的な者、③契約形態が特殊な者、④役員・管理職などがある。


労働契約上の「労働者」

労働契約上の労働者は、採用内定法理や配転・出向法理など、判例によって形成された労働契約法理の適用範囲となる労働者にあたるか否かを判断する概念である。これらの判例上の法理の一部を実定法化したのが「労働契約法」であり、労働契約上の労働者は労働基本法上の労働者と基本的に一致する。

そして、労働契約法は、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者を労働者と定義しており(労働契約法2条1項)、これは前述の労働基準法上の労働者の概念と同一である。従って、「労働契約上の労働者」と「労働契約上の労働者」と「労働基準法上の労働者」は労働者性の概念は一致し、判断基準も前述の労働基準法研究会報告の判断基準にあてはめればよい。

なお、労働契約上の労働者性が争われた例を類型別にみると、①業務遂行について裁量性が高い者、②零細下請業者的な者、③契約形態が特殊な者、④役員・管理職などがある。


役員の労働者性

役員が労働基準法(同時に労働契約や労働契約法)上の労働者となるかどうかの判断は、実務上よく問題となる。なお、労働者性を有する役員というのは、会社との関係で委任契約(役員)と雇用契約(労働者)の混同的契約であり、使用人兼役員という。従業員から役員成りすることが多い日本では、使用人兼役員というのは非常に多い。

おおむね、次のように判断できる。

・代表権のある人、監査役(※従業員兼務を除く)・・・原則として労働者とならない(使用人兼役員には該当しない)

 (※)監査役はそもそも使用人兼務を禁止されている(会社法第335条第2項)。

 なお、代表権のある人は、取締役会設置会社では代表取締役、代表取締役を選定していない取締役会非設置会社や有限会社では取締役(選定していれば代表取締役)、指名委員会等設置会社では代表執行役、理事会非設置型一般社団法人では各理事(代表者を選定した場合は代表者)、理事会設置型一般社団法人では代表理事等となる。
 判例によると、代表取締役とは、取締役会における業務執行に関する意思決定をするにあたり会社を代表して内部的及び外部的に業務執行にあたる会社の機関であり、その代表権の範囲は会社の営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為に及ぶ包括的なものであり、(実質的このような代表取締役の権限を有していないと認められるような)特段の事情がある場合もないとはいえばないが、原則として、代表取締役の地位は、使用者の指揮命令下で労務を提供する従業員の地位とは理論的には両立するものではなく、代表取締役が使用人としての地位を兼務するということはできないとしている。

ポップマート事件 (1999年12月24日/東京地)


・その他の役員

判例によると、役員の従業員性の有無については使用従属関係の有無により判断されるべきものと解されるが、具体的には、①業務遂行上の指揮監督の有無(仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無)、②拘束性の有無(勤務場所及び勤務時間が指定され、管理されているか否か、人事考課、勤怠管理をうけているかどうか)、③対価として会社から受領している金員の名目・内容及び額等が従業員のそれと同質か、④それについての税務上の処理、⑤取締役としての地位(代表取締役・役付取締役か平取締役か)や⑤具体的な担当職務(従業員のそれと同質か)、⑥その者の態度・待遇や他の従業員の意識、⑦雇用保険等の適用対象かどうか、⑧服務規律を適用されているかどうかなどの事情を総合考慮して判断すべきものと解されている。

美浜観光事件事件(1998年2月2日/東京地)


また、同判例では業務遂行上の指揮監督の有無として、「業務執行権」を有する取締役の指揮命令についても次のような基準を示している。

まず、「業務執行権」の意味であるが、会社の対内的な職務執行権であり、会社の営業に関する種々の事項を処理する権限であって、具体的には株主総会、取締役会の決議を実行に移すほか、日常的な取締役会の委任事項等を決定し、執行すること、すなわち、対外的代表行為を除く会社の諸行為のほとんどすべてを行う権限とされている。ここで、「ほとんどすべてを行う権限」という表現は、代表取締役社長など一番権限が高い者のみを意味していると誤解を招きやすいが、取締役間で定められた上下関係(社長・副社長・代表取締役など)によりある程度の指揮・監督を受けるものの(これが「すべて」ではない部分とすると理解しやすい)、取締役会の委任された業務の範囲ですべてを行う権限という意味である。(同判例も、実務上は会社の組織機構を統一的なものにし、かつ、組織運営をスムーズにするために、多数存在する取締役の間に上下関係を定めるとともに、それぞれの統括分野を決めることによって、指揮命令系統を明確にすることは多くの企業において行われており、例えば、複数いる代表取締役のうちの一名が、社長として他の業務執行権をもつ取締役を指揮監督して業務執行全般を統括しており、副社長、専務取締役は、会社の業務執行につき権限をもって社長を補佐し、常務取締役は、対内的な業務執行を、営業、総務、経理などのように分け、それぞれの担当分野を指揮・統括するといった例が少なくないとしている。)従って、「業務執行権を有する者と認められる者」とは、会社の1つの部門についてほとんどすべてを行う権限と責任を有する、所管役員もしくは通常取締役が就任するとされている部門長に任ぜられた者と考えるべきでであり、このような業務執行権を有する社長以外の取締役が、社長の指揮監督を受けることを理由に、すべからく当然に従業員性を有するということにはならないとしている。
 また、この業務執行権のある取締役については、厚生労働省が雇用保険及び労災保険における「労働者の取扱い(例示)」においても保険の対象とならないことが示されており、業務執行権のある取締役については、原則として労働者とはならない(使用人兼役員には該当しない)と考えるべきであろう。なお、業務執行権のある取締役から指揮を受ける者はそもそも業務執行権を有しないため、例えば、所管役員の下にある位置づけられる取締役本部長や社長の直下にいる取締役本部長の下に位置づけられる取締役部長は、そもそも業務執行権を有しておらず、厚生労働省の「労働者の取扱い(例示)」においても、「原則として、労働者として取り扱う。」としている。

 これらのことからおおむね次のように考えられる。

取締役会から委任された一定の部門についてほとんど全ての事項を決定権・執行できる者(業務執行者)で、他の業務執行者から指揮命令を受けていない者(※)・・・労働者とならない(使用人兼役員ではない)

(※)部長などの役職であってもその部門の業務執行者を兼任しているような場合は、指揮命令を受けていないことになる。(営業部所管役員 兼 営業部長のようなケース)


部長などの役職を兼務しており、他の業務執行者から指揮命令を受けている者

・・・原則(※)、労働者(使用人権役員)

(※)使用人分の給与があるかどうかを判断基準とすると、労働者であるか否かを事業者が容易に擬制できるため、会社法上の取締役であるかどうか、部長などの役職が名目的なもの(単に社内のパワーバランスを保つため実施された「たすきがけ人事」など)かどうか、業務の内容、勤務の拘束性などの実態に照らして判断することになる。


 なお、役員が使用人兼役員となるか争われた判例として、次のようなものがあり、特に従業員から取締役となる際の退職金の支給、職務内容並びに報酬の変化などが問題となる。

・従業員が取締役になった際に退職金を支給する等、退職を示す事実が無い
    →労働者性を肯定
  日本建設協会事件(1975年8月19日/東京高)


・事務長兼取締役であった者が、代表取締役であった取締役と比べて特別な職務を担当していたとはえない、また給与が全額従業員としての給与であった
    →労働者性を肯定
  総合健康リサーチセンター事件(1983年9月27日/大阪地)


・株式会社の代表者又は執行機関のように、事業主体である会社との関係において使用従属の関係に立たない者は従業員ではないが、取締役であっても業務執行権又は代表権を持たない者が工場長、部長等の職にあって賃金を受ける場合には、その限りにおいて従業員であると解され、営業部長、総務部長兼電球製造部長であった取締役について、代表取締役がその株式の大部分を保有し、株主総会も一回も開かれないという実質的にはAの個人企業と変りがない企業であり、原告もAの指揮命令を受けて営業部長等の職務を遂行していたことが認められた。(営業部長等が業務執行権を有するかどうかは明らかではないが、業務執行権を有していたとしたら、業務執行権を有していても労働性が肯定されたこととなる)

    →労働者性を肯定
  扶桑電気工業・東欧電気事件(1984年6月5日/東京地)


・従業員の最上位の取締役ではあったが、いわゆるワンマン会社であって、重要な指揮命令はすべて代表取締役から発せられており、一応法人組織となっているが、それは税務対策上のもので、株主総会や取締役会を適式に開催することもなく、代表取締役以外の役員はすべて名目的地位を有するにすぎず、業務内容が他の従業員とさして違わなかったことから労働者性が認められた。

    →労働者性を肯定
  山徳商店事件(1985年2月4日/東京地)

・従業員が取締役に就任する際には従業員を退職する取扱いをしていた会社で、取締役の就任に承諾することは、従業員の地位の喪失を承諾したものであり、取締役在任中に営業部長・研究開発部長の職務を行なううえで兼務していた使用人の地位は、取締役の地位にあることを前提としてなされる各職務の委嘱を受諾したことによって創設的に取得されたものであるとして、取締役在任中に有していた使用人の地位の労働者性を否定した。(取締役在任中に有していた使用人の地位は取締役就任前に有していた従業員の地位とは全く別のものであり、その継続するものとはいえない。
 なお、従業員を退職して取締役に就任する際には、取締役に就任することにより取得し得べき待遇上、権限上その他の諸利益及び従前よりの従業員の地位を失うことの不利益と取締役就任の申出を辞退することから生じ得べき不利益及び従前の従業員の地位に留まることにより受ける利益とをそれぞれ比較考量のうえ自らの責任で決断すべきものというべきであり、一旦取締役就任方を異議なく受諾したものであるからには、それまでの従業員たる地位の喪失をもあわせて承諾したとしている。
    →労働者性を否定
  加納鉄鋼事件(1975年9月22日/名古屋地)


・入社当社から役員であった者が、就業実態が現場労働者であった。

    →労働者性を肯定
  共同陶業事件(1975年12月23日/京都地)


・監査役就任後も従業員を兼務していた。(株式会社の監査役は会社又は子会社の取締役又は支配人その他の使用人を兼ねることができないものとされているが、その趣旨は、監査役の監査機関の性質上、取締役又は支配人その他の使用人から隔離し、その職務の公正を確保しようとするにあると解されるから、会社の使用人が監査役に選任され、その就任を承諾したときは、監査役との兼任が禁止された従前の地位を辞任したものと解するのが相当であり(最高裁第三小法廷平成元年九月一九日判決判例時報一三五四号一四九頁参照)、この理は、会社がいわゆる中小企業であっても何ら異なるところはないというべきである。)
    →労働者性を否定
  セイシン・ドライビングスクール事件(1991年5月23日/静岡地)


・取締役らが会社の中心となってその経営、管理に当たってきたこと、職務遂行に対する報酬は、会社の業績悪化に伴って漸次減額されたこと、諸手当の支給や雇用保険の適用はなく、税務上も役員としてのみ取り扱われてきたことなどから使用従属関係を否定。
    →労働者性を否定
  大島波浮港自動車教習所事件(1994年11月14日 /東京地)


・健康保険料、厚生保険料及び雇用保険料等の社会保険料を控除して支給しているが実質的に業務執行権を有していた取締役。
    →労働者性を否定
  佐川ワールドエクスプレス事件(1995年10月6日/大阪地 )


・取締役就任後、支給される金員の名目等に変更があったものの、具体的な職務内容は取締役就任以前と変わらなかった。

    →労働者性を肯定
  住建事件(1996年3月29日/長野松本支)


・登記簿上取締役であっても、経営に関与する等株式会社の機関としての取締役の業務執行に従事するなどの取締役としての実体がなく、実際の業務から見れば、一般の従業員と何ら変わらなかった。(取締役としての実体を備えているかどうかは、実際に遂行している業務の実態、給与の額やその取扱い、取締役就任前後の給与額等の諸事情を総合的に考慮して判断しなければならないというべきである。)

    →労働者性を肯定
  信榮産業事件(1999.5.27/東京地 )


・部長職にあった者が適格退職金を受領して取締役就任したが、その後も就任以前と同様の部長職で業務を継続して行い、決裁を受ける事項、勤務時間、休日の取扱いも従来と変わらない形で勤務していた。

    →労働者性を肯定
  奥野製薬工業事件(2001.10.26/大阪地)
 

労働組合法上の労働者

労働組合法は、適用対象となる「労働者」を、職業の種類を問わず「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義している(労働組合法3条)。
この労働組合法上の労働者概念は、大きく次の2つの点で労働基準法上と異なっている。

①使用者に現に使用されている(使用姓)が問われない

②報酬の面でも厳密な意味での労働対償性(賃金性)が問われず、賃金などに準ずる収入によって生活する者(給与等生活者)であれば足りるとされる。

経済的に弱い地位にある労働者にある労働者に団結活動や団体交渉を行うことを認めて対等な立場での労使自治を促そうとする労働組合法の趣旨からは、その前提として、広い意味での経済的従属性のみが要求され、労働基準法のように人的従属性(指揮監督下での労働)は要求されない。従って、労働組合法上の労働者には、その時点で働いていない失業者(これから労働関係に入ろうとする者や過去に労働関係にあり給与等で生活してきた者など)も含まれると解釈されている。(昭和23年6月3日労発262号)


これらの趣旨から、最高裁の判例は労働組合法上の労働者性の基本的枠組みとして、次のような6つの判断要素を示している。(厚生労働省「労働組合法条の労働者性の判断基準について」 INAXメンテナンス事件 新国立劇場運営財団事件)

①労働者が事業組織に組み入れられているか

②契約内容が使用者によって一方的に決定されているか

③報酬が賃金に準ずる収入として労働の対価としての性格を有するか

④業務の依頼に応じるべき関係にあるか(許諾の自由が欠如しているか)

⑤指揮監督関係の存在(時間・場所の拘束性など)

⑥事業者性(独立した経営判断に基づいて業務内容を指図し収益管理を行なっていること)の希薄さ

これらの判断要素のうち、経済的従属性を基礎付ける要素(①~③)が労働組合法上の労働者の労働者性の基本的な判断要素であり、人的従属性にかかわる事情(④、⑤)はそれがあれば労働組合法上の労働者性を肯定する方向にはたらく(それがなくても労働組合法上の労働者性を否定するものとはならない)補充的な要素として位置づけられる。また、仮にこれらの要素(①~⑤)によって労働者性が肯定されたとしても、顕著な事業者性(⑥)があると認められる特段の事情が存在する場合には労働者性は否定されうる。これらの点を判断するうえでは、契約の形式ではなく就業等の実態(当事者の認識や契約の実際の運用)をもとに判断しなければならないとされ、出演契約によりオペラ公演に出演する合唱団員(新国立劇場運営財団事件)、業務委託契約により製品の修理補修を行なう技術者(カスタマーエンジニア INAXメンテナンス事件)の労働者性が肯定されている。
 その他、これまでの命令例・裁判例によると、自宅でヘップサンダルの賃加工を行なう職人、自由出演契約によりコンサートに出演している放送会社管弦楽団の楽団員、トラック持ち込みの傭車運転手、運送委託契約により運送業務等に従事している者、コンビニエンスストアの店長(フランチャイズ契約の加盟社)などについても、広く労働組合法上の労働者性が認められている。また、プロ野球選手については、労働基準法上の労働者に該当するかは微妙であるが、労動組合法上は労働者であると認められ、プロ野球選手によって組織された労働組合日本プロ野球選手会はプロ野球機構に対し団体交渉権を有するものとされている。




人事労務の備忘録

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